大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(く)41号 判決

第一、抗告申立人Sは、本件事件が発生した直後Tの雇主であるHから附添人(弁護人)として選任されたもので、爾来甲府家庭裁判所にも出張し、右少年のため事件の円満解決に奔走していた。しかるに、甲府家庭裁判所は、昭和二十六年四月十六日保護者、附添人(弁護士)に対し何等審判期日の通知をなさず審判をなし即日決定をした。これは少年審判規則第二十五条第二項に違反するものである。

第二、母親Kの言によると、少年Tは、三十数日の身柄拘束保護処分によつて、前非を悔い、反省の日を送つているとのことであるから、この度は少年法第二十五条第二号によつて保護者である実母Kに引き渡す旨の決定と相成りたい。というにある。

よつて、記録を調査するに、T保護者Hは、弁護士Sを、Tに対する窃盗被疑事件の弁護人に選任する旨の弁護人選任届を右両名連署の上昭和二十六年三月二十日附をもつて、甲府地方検察庁に対し提出していること。甲府家庭裁判所は、昭和二十六年三月二十三日甲府地方検察庁から右事件の送致を受け、四月十日審判開始決定をなし、同月十六日その審判をなし、即日右少年を中等少年院に送致する旨の決定をなしたことは明らかである。しかして、右審判期日について原裁判所は、少年保護者、附添人に対し期日の呼出手続をしたことは記録上明らかではないが、右審判期日に、少年Tは出頭し、保護者たる実母Kも出席してその審判に立会つていることは記録上明らかであるから、そのうえ之等の者に対する期日の呼出手続を欠如したとしても、その権利保護には何等の欠くるところはない。次にS弁護士が右少年の附添人であるか否かにつき案ずるに、同弁護士が検察庁に弁護人として弁護届を差し出していることは前記のとおりであるが、少年法第十条第一項少年審判規則第十四条第二項第三項に徴すれば、弁護士が少年の附添人となるには、家庭裁判所に対し少年又は保護者と連署した書面を差し出さなければならないことは明らかである。従つて家庭裁判所において、事件を受理する以前において、弁護人として選任されていたとしても、その弁護人は当然附添人となるものということはできない。家庭裁判所が少年事件を検察庁に送致する場合に関する少年法第四十五条第六号の規定はこの場合には適用乃至準用すべきではないというべきである。しからばS弁護士が前記のように検察庁に対し弁護届を提出しているとしても、同人を直ちに附添人ということはできないから、原裁判所が同人に対し審判期日の通知をしなかつたことは何等の違法なく、従つて所論のような法令の違反があつたということはできない。

次に一件記録に顕れた少年Tの経歴、性行、家庭の情況、本件犯行の動機情況、その他諸般の情況を考量すれば、仮令所論のような事情を斟酌しても本人の将来の健全な育成を期し、その性格を矯正するためには、今直ちに実母に引渡すより、相当期間保護処分に付すべき必要あるものといわなければならない。

以上の理由により本件抗告はいずれもその理由がないから少年法第三十三条第一項により之を棄却すべきものとし主文のとおり決定する。

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